2026/07/02
第2話:ゴルフクラブの持ち方すらわからない…ネット検索で余計にパニックになる夜
「はぁ……。調べれば調べるほど、何が何だかわからない……」
深夜1時。静まり返った部屋の中で、私はベッドに寝転んだまま、スマホの画面を見つめて大きなため息をついた。画面のブルーライトが、私の絶望的な表情を白く照らしている。
昼間に課長から言われた言葉がどうしても頭から離れず、お風呂上がりに意を決して、Googleで「ゴルフ 初心者 始め方」「ゴルフ 女子 未経験」と検索してみたのが運の尽きだった。画面に溢れかえったのは、私にとってまるで宇宙語のような、全く馴染みのない専門用語の羅列だった。
スライス、フック、ダフり、トップ、アプローチ、パター、バンカー、OB……。 「スライスって何? 美味しそうな名前なのに、どうしてダメなの?」と、画面に向かってツッコミを入れたくなる。さらに私の心を折ったのは、「ゴルフクラブの基本」という解説記事だった。「初心者の方は、まずドライバーとアイアン、ウッド、パターを揃えましょう。クラブは最大14本までバッグに入れられます」と、さも当然のように書かれている。
14本!? そんなにたくさんの鉄の棒を、一体どうやって使い分けるというのだろう。そもそも、私にはどれが何番のクラブなのか、形を見ても全く区別がつかない。どれも同じような銀色の棒に見えてしまう。
さらに私の混乱に拍車をかけたのは、YouTubeで見つけた「正しいグリップ(握り方)の基本」という動画だった。画面の中の爽やかな男性インストラクターが、笑顔で解説している。 「はい、まずは左手の親指をシャフトのやや右側に添えて、右手の小指を、左手のひとさし指と中指の間に絡めるように乗せます。これがインターロッキンググリップです!」
「絡める? 乗せる? ……えっと、指がどうなってるの?」 私はスマホをベッドに置き、部屋の隅にあったクイックルワイパーを引っ張り出してきた。動画を一時停止しながら、その柄をゴルフクラブに見立てて、真似をして握ってみる。
……おかしい。手がものすごく不自然な形になって、指の付け根がピキピキと痛む。「痛い、痛い!」と思わず声を上げてしまった。日常の生活では絶対にしないような手の使い方だ。こんな不自然で力の入らない握り方をして、あの重そうなクラブを思いっきり振り回すなんて、絶対に無理に決まっている。
「持ち方(グリップ)すら満足にできないのに、小さなボールに当たるわけがないじゃん……」
ネットの記事には「初心者こそ、まずは気軽に打ちっぱなし(練習場)へ行ってみよう!」と簡単に書いてあるけれど、今の私にはその『気軽』がエベレスト並みに高いハードルだ。こんなクイックルワイパーすらまともに握れない人間が練習場に行ったら、周りの上手な人たちから「あの人、何しに来たの?」と失笑されるに決まっている。
カチッとクイックルワイパーを壁に戻し、私はベッドに潜り込んだ。明日も朝から仕事なのに、頭の中はゴルフの不安でパンクしそうだ。私、本当に営業部でやっていけるのかな……。そんな、置いてけぼりを食らったような寂しい気持ちを抱えながら、私は重い瞼を閉じた。
【プロのワンポイント解説】
情報は「引き算」が大事!最初は1本、1つのことだけでOK
ネットで検索すると、あまりの情報量に圧倒されてしまいますよね。美咲さんがパニックになってしまうのも無理はありません。現代は情報が多すぎて、初心者の方が「何が正解かわからない」と迷子になりやすい時代です。
ですが、安心してください。ゴルフを始めるからといって、最初から14本のクラブの種類を覚える必要も、全てのルールを理解する必要もありません。 実は、私たちプロや上級者でも、一番大切にしているのは美咲さんが苦戦した「グリップ(握り方)」です。なぜなら、体とクラブを繋ぐ唯一の接点だからです。
日常にはない手の使い方をするので、最初は違和感があって当然、指がつりそうになるのも正常な反応ですよ。まずはたくさんの情報を頭からシャットアウトして、「世の中には不思議な握り方があるんだな」くらいに気楽に構えておきましょう。
【まとめ】
ネット情報の荒波に飲まれ、夜中にクイックルワイパーを握りしめながら絶望してしまった美咲。1人で悩むのには限界を感じ、ついに会社の同期にSOSを出すことにします。 次回、第3話「同僚に相談してみた。『私、運動音痴だけど本当に大丈夫かな…?』」に続きます!
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